Black Hawk Down for FULL METAL PANICK
死者だけが、戦争の終わりを見た
プラトン
人が戦争をどう思おうが所詮同じだ、と判事は言った。戦争は果てない。石をどう思うか聞くのと同じだよ
戦争はいつだってこの世にある。人間が現れる前から戦争は人間を待っていた。
最高の生業が、最高の遣り手を待っていたわけだ
コーマック・マッカーシー『Blood Meridiam』より
離陸の時、相良宗介はいつも通り冷静だった。目の前には機長付き二人の間で足を組んで仰け反っている女性が見える。彼のチョーク(積載班。乗り物ごとに特定の番号がふられた積載部隊)の指揮をとっているメリッサ・マオ軍曹だ。ブラックホーク・ヘリコプターのキャビンの左右には砂漠用のベージュ色の迷彩服にハーネス(装帯)を着けた若者12名が窮屈そうに乗っていた。
宗介は、彼らのことを兄弟のごとく覚えている。わけても今眼前に座っているマオ軍曹や隣で海を眺めているクルツ・ウェーバー軍曹、車両部隊として地上でハンヴィーを運転しているヤン・ジュンギュ伍長とは永年、生活と訓練を共にしてきた。基礎訓練、降下訓練、レインジャー訓練、ずっと一緒だった者もいるし、世界中を駆けずり回った者もいる。
共に森の地面で眠り、飛行機から飛び降り、心臓が口から飛び出しそうな思いをして激流の中を下った事もあった。そこいらの兄弟よりずっとお互いの事を知り合っている。
1993年10月3日の午後3時前後のことだった。メリッサ・マオ軍曹率いるチョーク4は、陸軍レインジャーとデルタフォースからなる部隊の一部として、ソマリアの首都モガディシオの中央部で開かれているババルギディル族指導者の集会に招かれざる客として上空から降下しようとしていた。モハメド・ファラー・アイディード将軍率いるこの好戦的な部族は、内戦の鎮圧に向かった海兵隊の撤退と内戦の終結を待ち、宣戦布告した。
が、戦いを挑んだものの、その敗色は既に濃厚なものとなっていた。本日の目標は、会合に出席するアイディード将軍の副官二名である。この拉致作戦におけるチョーク4の任務はしごく単純なもので、レインジャーの四個チョーク班が、目標建物の四隅を確保する。強襲、拉致を行うデルタの作業区域の出入りを禁じるためだ。
チョーク4は西北の角にロープ降下してそこに封鎖陣地を設営する事になっている。
宗介はいつも通り冷静だった。自分のチョークの班長メリッサ・マオ軍曹は優秀な女性で、宗介は誰よりも信頼を置いていたし、他の隊員からの信頼も確かであった。ただ、クルツの隣に座っている新兵のトッド・ブラックバーン上等兵には気を配らねばならない。彼はまだ高校を卒業したばかりで、戦闘にもモガディシオにも慣れていない。積載班長の負担を減らすのもまた自分の役目なのだ。
機内に搭乗すると、宗介は積載副班長なのでマオからヘッドセットを手渡された。マイクつきのごついヘッドフォンで黒の長いコードが天井のプラグに差してある。宗介はヘルメットを脱ぎ、ヘッドフォンをかけた
それから一時間ほど、熱い駐機場でじりじりと身を焼かれ、航空燃料の排気ガスの刺激臭をかがされ、装備の下でだらだらと汗をかきながら、誰もがこの任務は離陸前に中止になるのだろうかと考えていた。そうなる事が実に多い。20回招集をかけられても作戦実施に行くのは1度という割合である
進発を表す本日の暗号『アイリーン』を無敵の兵士と機械達が待っている。どんな条件下でも安定して飛べる驚異的な複座型攻撃ヘリ、AH−6リトルバード・ヘリコプター。デルタの兵員輸送用にキャビンの左右にベンチを取り付けた物が4機、攻撃目標掃討用にロケットポッドとミニガンが搭載された物が4機、この8機の後に続いて、兵員輸送用に機体を伸長したMH−60ブラックホーク・ヘリコプターが続く。
4機が陸軍レインジャー部隊を運び、1機にCSAR(戦闘索敵救難)チームが乗り込む。残る一機に二人の任務指揮官、航空部隊調整担当のトム・マシューズ中佐と地上部隊を指揮するアンドレイ・S・カリーニン少佐が乗り込む。
正面ゲート脇でエンジンをアイドリングさせている地上部隊は、ダナン・アマサート中尉指揮するワイドなボディのハンヴィー(高機動多目的装車)9台と5tトラック3台から成る車両部隊。トラックは捕虜の収容に使われ、ハンヴィーは地上部隊の回収に使われる。
上空を飛行するターボプロップエンジン4基を搭載したP−3オライオン高高度大型哨戒機1機とOH−58観測ヘリコプター2機を含めると、実に航空機17機、地上車両部隊12台、総員約160名にもなる大部隊だ。ここまでの部隊を召集しておいて、今尚機上待機が続いていた。
が、今日はいつもとは違い作戦が実行される徴候が幾つかみられた。タスクフォースレインジャー指揮官のテレサ・テスタロッサ大佐が部隊見送りのために駐機場に出てきた。テスタロッサ大佐はアッシュブロンドを三つ編みにした髪が印象的な年のころ16,7歳の少女である。JOC指揮官の間では専ら『テッサ』と呼ばれるのが常であった。宗介は未だにレンジャーの平均年齢(18,9歳)より若いこの少女が現場指揮官なのが不思議で仕方なかったが、同僚に尋ねても「可愛いから許す」だの「上には上の事情がある」の返事しか返ってこず、納得のいく答えはまだ得られていなかった。
分厚いサングラスをかけ、ヘリを一機ずつ見てまわり、「気をつけて」次の機の前まで来て「幸運を祈ります」さらに宗介の機の前まで来て「気をつけて行って来て下さい」と一声。今まで一度もやった事の無い行為である。テスタロッサ大佐はキャビンから足を下ろし、車両部隊の方へと向かった。キャビンから首を出すと、駐機場を横断している大佐の姿が見えた。宗介が首を引っ込めようとした次の瞬間・・・
ずるべたーん
一瞬何が起きたのか理解するのには少々時間を要した。進発前の駐機場は何もなく平坦で、そこでこける自分の隊の指揮官の運動神経を疑った。さらにみているとリード(一番機)のハンヴィーから首を抜こうとした時にも、車の天井で強かに後頭部を打っていた。
宗介は自分の額に先ほどまでとはまた別の種類の汗が流れるのを感じながら機内に身体を戻す。
午後3時32分、リードのブラックホーク、スーパー64の積載副班長は機長のマイク・デュラントが低い声で嬉しそうに『くそ、アイリーンだ』と告げるのを聞いた。
「あはははは、そりゃ傑作だわ」
不意に室内に甲高い笑い声が響いた。といっても声自体は離陸直後から機内に設置されていたヘッドセットを介して聞こえていたのだが・・・
機長付き二人とマオ軍曹が話していたのは機長付きの片方、トミー・フィールドのメアリー叔母さんの話であった。宗介自身は聞いた事が無いし聞く気も無いので内容は知らなかったが、仲間の間ではなかなか有名な話らしく、クルツ曰く「あの話を聞かないなんてそりゃお前人生の半分損してるぜ」とのこと。宗介は17歳でその半分・・・つまり8年と6ヶ月程を損したと言われた訳だが、全くそうは思わなかった「俺の人生があと何年続くかわからん」等といった程だ。
「二分」
マオがにやけ顔で人差し指と中指を立ててこちらに示した。宗介は離陸直後からつけていたヘッドセットのおかげでマオの声まで聞こえていたが、ヘッドセットを付けていない他の隊員達はそうはいかない。駆動音がうるさい機内では、耳元で大声を張り上げても内緒話程度にしか聞こえないのだ。それは地上に降りてからも同じで、激しい銃撃戦の爆音の中ではいくら叫んでも相手にこちらの声は届かないし相手の声もまた届く事は無い。こういった時、いつでも役に立つのはハンドサインだ。予めサインを決めておけば、話すより確実に相手に意思を伝えられる。
霞のかかった砂漠の地平線に向かって飛んでいくと、昼下がりの陽光を浴びたモガディシオがまるでレンズの絞りを開ききったかのようにまぶしく輝いた。3マイル程の短いフライトだ。遠くから望む古い港町は、黄土色の砂地の通りとスペイン風の瓦の屋根と錆びたトタン板が入り混じって赤茶けて見えた。
長い内戦の末、高い建物はその殆どが破壊され、モスクの白い塔だけがきれいにその原形をとどめていた。ソマリアで今尚神聖視されているのはイスラム教だけである。西を砂漠に、東を深緑色の海に挟まれたその都市は、荒廃さえしていなければ地中海ののんびりとしたリゾート地の様でもある。
ヘリコプター部隊は、海側から接近してったん街の上空を通過し、右に大きくバンクをかけて街の西端に沿い東北へと帰飛した。
眼下では一国の首都が悲惨な状況に陥っていた。建物の殆どは破壊され、空き地という空き地には白い布が被せられたテントのような物が設置されている。もはやそこに色彩はなく、ただ白と黄土色の景色が広がっているだけであった。
スーパー67に乗る宗介は頭の中で作戦を反復した。
自分達が降下ポイント上空に到達する頃には、デルタフォースが攻撃目標の建物を制圧し。ソマリ族の捕虜を集合させ、応戦する愚か者を撃ち殺しているはずだ。デルタが自らの作業を進め、レンジャー部隊が野次馬を遠ざけている間に、トラックとハンヴィーから成る車両部隊が市内にはいり、目標建物に車両を横づけする。捕虜がトラックに乗せられ、強襲部隊と封鎖チョーク班が続いてハンヴィーに乗り込み、そのまま基地に帰って日曜の午後をのんびり過ごす。一時間たらずの任務だ。
彼らはレインジャーである事を誇りに思っている。レインジャーであれば、陸軍でたいがいの下士官と兵卒の腹立ちの種となっている戦闘とはかかわりの無い日常勤務をやらずにすむ。レインジャー部隊は常に戦闘に備えて訓練する。彼らはより強健で敏速で正確でトップを切っている精兵なのだ。
既に攻撃目標上空では軍が誇る最新鋭機による情報支援活動が繰り広げられている。数基の衛星に加えてオライオン哨戒機1機と観測ヘリコプター2機が常に戦場の情報を司令部に届けていた。
取り分け観測ヘリコプターOH−58はその独特な形状の機首部分にビデオカメラと無線装置を搭載し、海岸の統合作戦センター(JOC)で総合指揮をとっているテッサや幹部将校に戦闘の状況を生中継している。テスタロッサ大佐がモガディシオ空港の一画を陣取ったこの総合指令部の椅子に座りながら現場の指揮を取ることが出来るのもそのおかげなのだ。
ブラックホーク隊が北から高度を下げて最終進入態勢をとる頃には、前方のデルタを乗せたリトルバードは既に目標の建物に接近していた。濛々と辺りに立ち込める黒煙が宗介の警戒をよりいっそう高める。ソマリ族は何か騒動があるとタイヤを燃やし、民兵を呼ぶ。もしかしたら自分達は敵が大勢待ち伏せしている所に飛び込むのではないか?
『おい、煙が上がってるぞ』
ヘッドフォンからヘリの機長たちの通信が聞こえてきた。
『奴らタイヤを燃やして民兵を呼んでるんだ』
『あのタイヤはいつごろから燃えているんだ?』
スーパー64の機長、マイク・デュラントが観測ヘリコプターの機長に問う。
『あのタイヤは今朝からずっと燃えている』
観測ヘリコプターの機長が答えた。
「一分」
マオが人差し指を一本だけ立てる。それは降下まで残り一分の意を表すと同時にデルタが目標建物の接近に成功した事を示していた。直後に、各部隊が無線で『ルーシー』と復唱する。空挺強襲開始の暗号だ。ロメオ64がカリーニン少佐、キロ64がデルタの空挺強襲部隊指揮官キャステロ中尉、ジュリエット64は、デュラントのブラックホークに乗るレインジャー部隊指揮官ゲイル・マッカラン大尉、ユニフォーム64が地上部隊の指揮をとるダナン・マサアート中尉だ。車両部隊は既に目標建物の直そばまで到達している。
『ロメオ64、ルーシー』
『キロ64、ルーシー』
『ジュリエット64、ルーシー』
『ユニフォーム64、ルーシー』
『全部隊ルーシー』
午後3時43分。テレサ・テスタロッサ大佐以下、JOC幹部仕官は、モガディシオより遥かに安全でマシな建物の中で壁一面を覆いつくしそうな巨大な画面を前に、戦場の様子を上空から見ていた。この辺りで一番目を惹くふた棟のビルが、前を通る広い舗装路、ホールワディックロードに濃い影を落としている。
画面でモニターしている分には作戦は滞りなく進んでいた。デルタを乗せたリトルバードは大した抵抗もなく目標建物に接近できそうだし、レインジャーを乗せたブラックホークも民兵が付近に近づいているものの問題になるほどの事ではなさそうである。リトルバードには勿論の事、ブラックホークにも自衛用のミニガンが搭載されている。
後は彼らがハンヴィーに乗り込み、基地に帰還するのを待つだけだ。
テッサは机上に置かれた飲みかけの缶『O'SIRUKO』をぐぃっと飲み干す。
宗介がふと視線を機内から機外へと移した時だ。デルタを乗せたリトルバードが前方の白い建物の屋上にホヴァリングしながら徐々に降下していくのが見えた。キャビンからぶらぶらと垂らされた足が屋上に着くと同時にヘリの左右から勢いよく兵士が四人飛び出し、外付けされた階段を下って中へ入っていく。
こうした建物の制圧を、デルタは専門としている。彼らの動きは実に鮮やかで速い。人間というのは閉鎖された室内で爆発や煙や閃光が起こると、一瞬恐怖にかられて、どうすればいいのかわからなくなる。殆どの者は倒れるか部屋の隅に向かう。自失しているところを襲えば、大体単純な命令に従うものだ。宗介達はこれまでも数度、デルタのこうした仕事ぶりを見ている。それは訓練された人間でさえ、落ち着きを取り戻して反抗する時間など微塵も与えていなかった。時間をかければそれだけ相手に考える余裕を与えてしまい、服従させるのが難しくなる。建物の制圧には速さが不可欠なのだ。
「ロープを下ろす用意をしろ」
ホヴァリングを開始したスーパー67の機長がマオに指示する。チョーク4は地上からかなりの高さにいたが、ローターブレードに撒かれた風によって砂埃が入り込んできた。マオがヘッドフォンを外す。宗介もそれに続いてヘッドフォンを外すと、激しい騒音が彼の耳を刺した。ヘリのローター音もさることながら、それより一際大きくパン、パン、という銃声が聞こえる。
いくら最新のヘリコプターといえども、ホヴァリング中のブラックホークは敵の格好の的だ。ここで長居する必要は全く無い。右側のドアで待機しているのは狙撃を得意とする宗介の同僚クルツ・ウェーバー軍曹、左側のドアの先頭を切るのは新兵のギャランタイン軍曹だ。
「ロープを下ろせ!」
機長が大声で叫ぶ。
「ロープを下ろせ!」
マオが復唱。
合図と同時に両側のドアのそばに置いてあるロープを二人が蹴り落とした。不運なことに、そのうちの一本が下に停めてあった車の上に落ちてしまった。宗介がクルツの指示を受け、マオにその旨を伝えるとそこからマオが機長に伝えた。宗介のチョークが乗るスーパー67はロープを車から離す為前進する。
「指定位置より100メートルほど離れているぞ」
「問題ないわ」
マオが親指を立てて示した。
「行け、行け、行け」
右側からはクルツを、左側からはギャランタインを先頭に隊員がいっせいに降り始める。銃撃の音も徐々に激しさを増してきた。
宗介が左側のロープから降下しようとゴーグルを掛け、前を向いたそのときだ。半壊し、露出した階段を駆け上る三人のソマリ族が見えた。そのうちの一人が大きな筒に弾頭をくっつけたようなRPG(無誘導対戦車ロケット)を肩にかけていた。RPGはロシアが開発した使い捨ての対戦車ロケットで値段が安価で手に入れやすいことから、多くのテロリストや兵器の配備が進まない地方の軍などで広く使われている。また、使い捨てとはいえど、実際使い捨てなのは弾頭のみで、弾頭を取り替えればまた何度でも使用する事が出来る。無誘導なため命中率は著しく劣るが、勿論対空兵器としても使用できる。さらに不運な事に宗介達が乗るこのスーパー67は現在兵員降下中で、ホヴァリング状態にある。いくら無誘導とはいえ、この状態のブラックホークに当てるのは容易い。
「10時の方向にRPGを持った民兵が3人!!」
宗介が瞬時に叫ぶ。こちらのロープは降下しているものはいなかったが、反対側ではブラックバーンが降下の最中のはずだ。
「何かに掴まれ!!」
宗介と反対側のドアで構えていたマオが大声で叫んだ。と同時に機長がメインローターの回転数を瞬間的に上げ、機首をぐぃっと持ち上げるような機動をとる。
間一髪、RPGは操縦席の下ぎりぎりを通過し、向かいの建物に当たって爆発した。
宗介は再びゴーグルをかけ直し、ロープをしっかり握って飛び降りた。
宗介が降下を終えると、一足先に降りていたマオがしゃがみ込んでいた。
「宗介!衛生兵を呼んで!」
マオの前で倒れているブラックバーンをみて、状況がわかった。負傷だ。
「どうした、どこから撃たれた!?」
流れ弾に当たったか、それとも誰かに狙撃されたか。後者の方はこれまでのソマリ族との戦闘でまずあり得ないと解っていた。それに仮に狙撃兵がいようものなら、自分達は既に頭を打ちぬかれて街中引きずりまわされているところだ。
「ドク!ドク、シュミット!」
近くに待機していた彼の班の衛生兵、シュミット伍長の肩を叩き、負傷者がいることを伝える。
宗介が未だ砂埃の舞う辺りを警戒する。ブラックバーンが落ちたのは十字路のど真ん中で、この戦場で最も危険な場所だ。
「誰が撃たれた!?」
シュミットがマオに問うのが聞こえた。
「落ちた!撃たれて無い!落ちたのよ!早く担架を!」
ブラックバーンはチョーク4のM60汎用機関銃手の助手で、他の隊員よりにも多く、そして重い装備を背負っていた。そのため、先の激しい回避機動に耐える事が出来ず、ロープから手が離れてしまったのだろう。
シュミットが一旦道の端に寄り、通信兵のムーア伍長と担架を組み立て、戻ってきた。
「マッカラン大尉を呼んで!」
マオがムーアに叫ぶ。
「ジュリエット64!ジュリエット64!こちらジュリエット25!応答願います!」
ムーアの無線には雑音が響くばかり。
「繋がりません」
マオは自分のウォーキートーキー無線を試してみた。
「ジュリエット64!こちらジュリエット25、負傷者一命!至急搬送が必要!車両舞台はどこに!?」
『もう一度いってくれ』
マッカランが言った。
「マッカラン大尉!こちらチョーク4!負傷者一命!至急搬送が必要」
マオがさらに声を大にして無線に叫ぶ。
『25、よく聞こえない。落ち着いてもう一度いってくれ』
ゲイル・マッカラン大尉にはマオの声が途切れ途切れにしか聞こえていなかった。
「くそ!」
マオは無線を諦め、自分の班員が今どの様な状況なのか確認しようと辺りを見回す。すると道路の向こう側から、デルタの隊員二人が走ってくるのが目に入った。
今の無線を聞いて駆けつけてきたのだ。
「どうした?」
デルタの一人が問いかけた。
「負傷者よ!早く搬送しないとマズイ!」
マオが叫ぶ
「よし、俺たちが引き受けよう。車両部隊は直そこだ」
シュミットがブラックバーンの腕に注射を差し、点滴の袋をつなぐ。
デルタの隊員二人が担架を持ち、ムーアが点滴の袋を持ってもと来た道を走っていった。
銃撃はいよいよ激しくなっていく。
マオは道路の中央に集まった隊員全員に散開するよう指示を出し、ブラックバーンの弾薬の一部を拾い上げた。
「ネルソン!グライムズはどうした?」
ネルソンはチョーク4のM60汎用機関銃の銃手を勤めている。一つのチョークには必ずM60とSAW
(分隊自動火器)が配備されている。宗介のチョークのSAW銃手はジョン・ウォデル。弾薬を持って駆け回る助手は、墜落したブラックバーンとグライムズ特技仕官だ。グライムズはもともと事務所でデスクワークとコーヒー淹れをしていたが、腕を骨折した同僚にかわって今回が初戦闘だ。
「デルタと一緒にシュミット達の護衛に行きました!」
「弾薬よ」
「感謝します!軍曹」
マオはブラックバーンの弾薬をネルソンに渡し、再び角の確保に戻った
メッセージ
皆さんどうも初めまして。SANAKIと申します
この度は、本作を読んでいただいてありがとうございます。このサイトで連載されている皆さんの素晴らしい作品に影響されて、僕も書いてしまいました。
当初、投稿しようか迷っていたのですが、思い切ってさたびーさんに送らせて頂いたところ、寛大にも歓迎してくださると仰ってくださったので投稿させて頂きました
書いていてひしひしと感じたのですが、やっぱりキャラの配役とかかなり厳しい^^;(あと原作の階級がめちゃめちゃですね)テッサの位置付けをどーしようかとかなり悩みました。当初は出さないでおこうかと思ってましたが、全国のテッサファンに申し訳ないですし、華がね・・・(爆)かなめはストーリー上ちょっと出せないので今回はお留守番です
なんか長くなりそうなのでこの辺で切り上げましょう
まだまだ至らない所が多々あると思いますが、これからも読んでいただけると非常に嬉しいです。
今後ともヨロシクお願いします